大企業を中心に、RPA(Robotic Process Automation)を導入して既存の業務を自動化したという話が、多く聞こえてきています。「年間数万時間分の作業を削減」など効果は大きいものの、RPAソリューション自体が高額であることが多く、コストパフォーマンスへの不安を持つ企業も目立っています。
その不安を解消するサービスが登場しました。金融大手SBIとシンガポールのAI・RPAベンチャーAntWorks(アントワークス)の合弁企業、SBI AntWorks Asiaが提供する集中管理型のRPA製品「QueenBOT RPA(クイーンボットアールピーエー)」です。
多くの企業が初期に採用する最小構成で、年間費用は税別30万円という低コストが特徴です。さらに、効果を確認しながら柔軟に拡張できます。QueenBOT RPAについて、SBI AntWorks Asiaの代表を務める横山さん、技術担当の秋本さん、AntWorks本社開発チーム所属の今泉さんに話を聞きます。RPAによる企業の課題解決に加え、QueenBOT RPAの導入キャンペーンについても紹介します。
RPAへの期待に反して、現実には難しさも
―― 最初にRPAの効果について教えてください。また導入を含めた難しさもあると思いますが、そのあたりについてお聞かせください。
横山経済産業省が2020年12月に「DXレポート2(中間とりまとめ)」を公表しました。この中で全体の9割以上の企業が、デジタルトランスフォーメーション(DX)にうまく取り組めていないという記述があり、関係者を驚かせました。ここで「直ちに取り組むアクション、DXのファーストステップ」として、RPAを用いた定型業務の自動化が挙がっています。RPAは話題になっているだけでなく、実際に日本企業が取り組むべき具体的なソリューションとして認識されています。
SBI AntWorks Asia株式会社取締役 技術担当秋本尚吾氏秋本RPAは、従業員が「面倒だ」「楽しくない」と感じる仕事をソフトウエアが代わりに自動でやってくれる点が大きなメリットです。全国各地の支店の売り上げ情報を毎朝集計するなど、単調ながらミスが許されないような仕事のストレスから、従業員が解放される効果もあります。そこで浮いた時間を、新商品を考えたり、他社との協業の枠組みを考えたりなど、アイデアが求められる仕事に回せるため、従業員と経営層の両方の満足度も高まります。
ただし、RPAの期待は大きいですが、すべてのプロジェクトが成功しているわけではありません。業務効率化とコスト削減を追い求め過ぎると失敗につながるケースが多くなります。自動化する業務を洗い出し、その中から導入費用に見合う業務を探すという作業は、特に中堅・中小企業にはハードルが高いのが実情です。導入費用が高過ぎて想定したほど自動化できる業務がなかった、という状態になり、導入をあきらめる企業もあります。
「超短期」の取り組みとしてRPAが求められている―― そのあたりの具体的な効果と課題を、ケーススタディーを交えて教えてください。
秋本RPAの具体的な効果として、例えば現場での異常値をチェックする作業の自動化、発注書などの自動取り込み、売り上げ報告に伴うまとめ作業の自動化などがあります。しかし多くの場合、各業務用のロボットに対する開発・運用コスト、RPAのライセンス費用を考えた時に、コスト削減に目が行き過ぎると自動化に躊躇してしまいます。われわれのQueenBOT RPAは非常に安価である点に優位性があります。セキュリティを確保した上でスモールスタートでき、効果が出てから他部門に展開できる集中管理型のRPAなので、従来の人件費と比較したコスト効果を確保しやすくなります。
SBI AntWorks Asia株式会社代表取締役横山宏明氏横山外国為替証拠金取引(FX取引)の専業事業者であるSBI FXトレード様に、QueenBOT RPA を提供しました。わずか2日間で内製化による自動化を実現したというプロジェクトです。対象は「暗号資産CFD」というサービスに関する業務です。ユーザーに提供する暗号資産のレート情報が、何らかの理由によりリアルタイムで更新されないという事態が発生する可能性があります。障害の発生を常時監視できないため、エラーを検知し、通知するロボットをQueenBOT RPAで構築しました。
QueenBOT RPAの選定について、SBI内でRPAツールを取り扱っている企業が誕生したため、今後の活用を見据えながら試験的に導入したのがきっかけです。既存のツールよりもかなり低コストだったことが決め手になったと聞いています。RPAのロボット開発はお客様自身で行われました。従来開発してきたものも含め、社内で約30体作成したノウハウがありました。これまでのRPAツールと同様に一般的な設計でロボットを開発できたこと、またエラー通知の仕組みが複雑なものではなかったことから、2日ほどでロボットを作成。すぐに運用を開始しました。RPAは、数カ月かかる新規サービスのためのシステムの開発期間を短くし、早期に立ち上げられるという大きなメリットがあります。今回紹介する資料にその辺りを詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
SBI FXトレード株式会社様事例より―― RPA導入で解決できる課題があるにもかかわらず、決断できない企業も多いと聞きます。そこにはどんな障壁があるのでしょうか。
秋本やはり費用対効果の確信が持てないケースが最も多いです。その点、QueenBOT RPAは、他のRPA製品と同じように多くのユーザーがロボット開発を手掛けられる製品であるにもかかわらず、製品のライセンス費用が低くなっています。そのため、導入支援パートナーにロボットが軌道に乗るまで助けてもらったとしても、十分に費用対効果を出せます。パートナーから、メンテナンスに必要な文書化ノウハウを得たり、メンテナンス自体を代行してもらったりなど、選択肢が広がるわけです。
今回紹介する資料には、バックオフィス用クラウドサービス「経費BankⅡ」「承認Time」を含む、12のサービスを展開されているSBIビジネス・ソリューションズ様の経理アウトソーシング事業で、導入支援パートナーがQueenBOT RPAを利用して「年間400時間分の作業を削減」していただいている内容を詳しく書いております。こちらもぜひご覧ください。
SBIビジネス・ソリューションズ様事例よりAntWorks本社開発チームProduct Engineering Director今泉諒平氏今泉AntWorksはシンガポールに本社を置く、2015年設立のスタートアップ企業です。設立から年数は浅いですが、シンガポールビジネスレビューのイノベーターオブザイヤー2019を受賞したり、急速に存在感を高めています。
近年、米国で経験を積んだインドの人たちが母国へ戻り起業する流れが起こり始めているようです。AntWorksも米国の有名テック企業で経験を積んだメンバーが技術チームの中心になり、インドの技術者を束ねて開発を進めています。
私自身はもともと保険会社の数理部門に在籍し、統計の知識を生かして保険商品の設計などをしていましたが、コロナ禍でなければインドを拠点にする予定でいました。ビッグデータを扱えるエンジニアが在籍していることで、RPAとしての機能面の拡充も見込めます。
秋本ユーザーが持つ障壁を解消するという意味で、QueenBOT RPAのライセンス形態も鍵を握ります。通常のRPAは、人が業務に使用するPCで稼働する「有人ロボット」と、専用のPCや仮想環境で完全に稼働を任せる「無人ロボット」に分かれます。有人ロボットが営業日のみ1~2時間稼働などにとどまるのに対して、無人ロボットは24時間365日稼働するタイプのRPAロボットです。無人ロボットの方が稼働時間、つまり導入効果が10倍以上になることもありますので、ライセンス価格は無人ロボットの方がずっと高くなる傾向にあります。一方でQueenBOT RPAでは、標準価格で両方のロボットを実行できます。
また、ユーザー、ロール、スケジュールなどを集中管理する機能や、監査ログ、管理側での認証情報保管、ISO-27001 認証、GDPR準拠などセキュリティやコンプライアンス対応も金融機関で十分活用してもらえるほど万全です。
システム面でも、1台のPC 上で複数のロボットを同時実行できるマルチテナント型である点に加え、OSやネットワークの問題などで途中で止まってしまったロボットを他のPC上で途中から継続実行できるフェールオーバーなどさまざまな機能を備えています。
製品ライセンスは、ロボット作成用ソフトウエア「BOT Builder」が年額12万円、ロボット実行用ソフトウエア「FireANT」上で動作するロボット「ANTBot」が年額18万円で、計30万円からと格安の値付けになっています (価格は全て税別)。これに管理用ソフトウエア「QueenBOT Orchestrator」が含まれている点もメリットです。
QueenBOT RPA製品ライセンスの考え方と標準価格調査会社からの評価も、Everest Group社による「Intelligent Document Processing (IDP) Products PEAK Matrix Assessment 2021」において3 年連続でリーダーに選出、HFS ResearchのTop 10 RPA Software Products 2020でリーダーの1 社に選ばれ、NelsonHall社の「NelsonHall NEAT Intelligent Automation Platforms Leader Report 2019」の「End-to-end Intelligent Automation Capability」で最上位のリーダーに選出されています。
日本のリクエストが反映された新版投入と移行キャンペーン
―― コスト面や機能面を含めて、製品の魅力がよく分かりました。今後はどのような展開を予定していますか?
横山2021年8月半ばにQueenBOT RPAの新版がリリースされたところです。追加した機能や修正点の約70%が日本からのリクエストであり、日本市場への展開を考慮していることがおわかりいただけます。さらに、他社のRPA製品を利用している企業を対象に、移行キャンペーンを実施予定です。RPAの運用に悩みを持つ企業に、ぜひ活用してもらいたいと考えています。