日本マイクロソフトは6月9日、IaaS/PaaS「Microsoft Azure」とSaaS「Office 365」の最新機能などを説明した。同社は最近、「マイクロソフトクラウドサービス」という呼び名でAzureとOffice 365を総称しており、米本社最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏が打ち出す「クラウドファースト」戦略に則って、クラウドサービスへの投資を加速している姿勢を示している。
拡張を続けるAzure
Azureについては、4月にWindows Azureから名称変更したことに触れ、日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部クラウドアプリケーションビジネス部 谷彩子氏は「この名称変更は、.NET以外にもオープンな言語が活用できるという点、製品名だけでなく会社の名前をつけたことで、会社としてこの分野に投資をしていくことの意思の表れである」と切り出した。
日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 クラウドアプリケーションビジネス部 谷彩子氏「Azureは、2014年に入ってからも引き続き多くの新機能が搭載されており、公式サイトで閲覧できる『サービスの更新情報』では、5月だけをみても1ページに収まらない数の新機能が提供されている。4月には33本、5月には29本にブログを通じて新たな機能を紹介している」
Azureのデータセンターは当初、米国4カ所、欧州2カ所、アジア(香港、シンガポール)2カ所の8カ所でスタートしたが、現在は、日本に2カ所、中国2カ所、オーストラリア2カ所、ブラジル1カ所(6月5日稼働)、そして、米国の政府機関向けの専用データセンターを含めて16カ所が稼働しているという。
日本では、2月26日から東日本リージョンと西日本リージョンの2カ所のデータセンターが稼働。これにより、国内でのデータ保持と災害対策が可能になり、遅延は国外を経由したものに比べて3倍以上改善したという。
クラウド導入の無償相談窓口であるCloud Directを設置したほか、クラウド導入と移行支援サービス、日本語での24時間の障害サポート体制を確立。「今後、日本のデータセンターを活用した事例も続々発表していきたい」
PaaSではウェブサイト向けのAzure Web Sitesでは自動スケーリングやステージング、Web Jobs、Traffic Managerのサポートといった機能を提供。同じくモバイル向けのMobile Servicesでは.NETやNode.jsでのバックエンド開発を可能にしたほか、Table StorageやSQL Databaseなどへの柔軟なデータアクセス、ブロードキャスト通知、Active Directoryサポートを提供したという。
データベースサービス領域では、SQL Databaseの最大容量を150Gバイトから500Gバイトに拡大。SLAを従来の99.9%から99.95%に高めたほか、セルフサービス復旧やアクティブ地理レプリケーションも提供している。従来のWebとBusiness Editionの形態から、パフォーマンスレベルで区分しベーシック、スタンダード、プレミアムに3つの種類に変更した。「容量だけで区分するのでなはなく、パフォーマンスレベルの指標で、利用者がパフォーマンスの予測がつきやすい形にした」
ストレージ関連では、Azure Filesや読み取りアクセス地理冗長ストレージなどの機能を提供している。既存と新規のアカウントのストレージ容量の制限を500Tバイトにまで引き上げた。メディア系機能のMedia Servicesでは、ライブストリーミング、ダイナミックパッケージ、ダイナミックエンクリプションといった機能を提供している。「Media Servicesでは、パートナーのアプリケーションなどを含めて幅広い連携を図りながら新機能を提供することになる」
IaaSでは、Azure仮想マシンでVMサイズとしてA8とA9をサポートする。マルウェア対策エージェントもサポートするほか、複数ディスクをまとめてキャプチャを可能にするVMキャプチャ、実装やプロビジョニングを自動化するソフトウェア「Puppet」や「Chef」、「PowerShell/DSC」でVM構成をサポートする。仮想ネットワークでは、ポイント対サイトVPN、サイト対サイトVPNといったマルチ対応のほか、動的ルーティングなどにも対応するとした。
プレビュー版として提供している新たなAzureポータルでは、サービスの正常性、課金情報、Application InsightなどのDevOpsに関連するすべてのプロセスをひとつのポータルでサポートできることを強調してみせた。
日本マイクロソフト Officeビジネス本部 Office 365戦略担当 米田真一氏倍々ゲームで伸びるOffice 365
Office 365では、日経225銘柄企業の約60%の企業がすでに導入しているという。教育分野では、高等教育機関の3人に1人にあたる170万人を突破していることなどを説明。日本マイクロソフト Officeビジネス本部Office 365戦略担当の米田真一氏は「Office 365は、米国では四半期の決算発表のたびに倍々ゲームで伸びていることを示しているが、日本でも急速に成長している」と切り出した。
1~5月に主な新機能だけで49種類の機能をリリースしたことに触れ、「Office 365では、デバイスへの対応、エクスペリエンス、ソーシャル、コミュニケーション、インサイト、コントロールという6つの領域から新たな機能を提供しているが、直近5カ月の間に提供された新機能のうち、約半分がコントロールの領域。クラウドを導入する際に、お客様に安心して利用してもらえる部分に力を割いている」
具体的な新機能として、オンプレミス型で日本のユーザー向けに提供されていた階層型アドレス帳を提供を開始したほか、Mail AppsのAPIが拡張されたことで強力なコントロールが可能になるなどのOWA(Outlook Web App)関連の各種機能拡張、組織外のメールアドレスにも暗号化されたメールでやり取りできる「Office 365 Message Encryption」がある。