本県を含め全国で猛威を振るっているRSウイルス感染症。患者の多くが1歳以下の子どもが占める呼吸器の感染症で、鼻水やせき、発熱など風邪と同じ症状が数日続く。その後回復することが多い一方、細気管支炎から呼吸困難になるなど重症化することもある。もしかしたら重症化しているかも―。その判断のポイントや症状の特徴を、大原綜合病院(福島市)小児科診療顧問の三島博医師(75)に聞いた。
―RSウイルス感染症とはどんな病気か。 「2歳までにほぼ100%の子どもが1度は感染する病気で、鼻水やせき、発熱など一般的な風邪の症状が出る。多くは数日で回復するが、せきがひどく、呼吸困難になり、入院が必要な場合もある。特効薬はなく、対症療法による治療で、たんの切れを良くする薬や気管支を広げる薬が処方される。ただ、RSウイルスの検査は入院患者らを除き1歳未満でないと保険適用にならず、特効薬もないことから、1歳以上の子どもに検査をしない小児科も多い。通っている保育施設などで流行していて同じような症状があれば、感染している可能性がある」
―どのように症状が悪化していくのか。 「せきがひどくなるとミルクや水分を取っても吐いてしまい、せき込んで眠れなくもなる。子どもは睡眠不足だと体力が落ち、食欲もなくなって脱水気味になる。水分が足りないとたんの切れが悪くなり、呼吸が苦しくなる」
―症状悪化と病院を受診する目安は。 「せきがあっても、普段と変わらない生活リズムで過ごせていれば問題ない。せきなど呼吸器の症状が強くなっていることに加え、眠れない、食べられない、水分を取れない、元気がないなど全身状態が悪化している場合は注意が必要だ。特に基礎疾患のある子どもは重症化しやすい。子どもは正直で、体調が悪ければ機嫌の悪さや元気のなさに直結する。子どもの様子が『いつもと違うな』『昨日より悪化している』と感じたら、かかりつけ医に相談してほしい」
―RSウイルスに感染するのは子どもだけではない。 「一般的に大人が感染しても鼻水やせきなどの症状だけで自然に回復することが多いが、基礎疾患のある高齢者が感染すると肺炎になるなど重症化することがある。子どもと高齢者が同居する世帯などは高齢者への感染を防ぐことも大切だ」
県内の感染者数前年比5倍
県感染症情報センターによると、県内のRSウイルス感染者数は、今年1月から7月25日までに1609人確認された。前年同期比で約5倍に上っている。感染者数は小児科定点50機関からの報告数のため、実際の感染者はさらに多いとみられる。
県内では5月中旬から中通りで流行が見られるようになり、7月下旬には県内全域で流行。感染者1609人のうち0歳と1歳が約半数を占めるが、例年と比べると0歳の割合が減り、2歳以上の感染者が増加しているという。
新型コロナウイルス対策の徹底で、昨年のRSウイルス感染者数が減り、十分な免疫を獲得できなかった子どもが増えたことが原因という見方が濃厚だ。