Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏は、LinuxカーネルにParagon SoftwareのNTFS3カーネルドライバーを導入することに同意し、Linuxカーネル5.15ではNTFSファイルシステムのサポートが強化されることになった。ただし同氏は、カーネルにコードをサブミットする際の手順とセキュリティに関する対応に苦言を呈した。
Paragon SoftwareのNTFSドライバーは、LinuxでWindowsのNTFSドライブを簡単に扱えるようにするものだ。NTFSはFATの後継にあたるMicrosoft独自のファイルシステムで、これによって数十年にわたって続いたNTFSがらみの困難が解消されることになる。
Torvalds氏はこの8月に、Paragon SoftwareのNTFS3カーネルドライバーの統合にゴーサインを出し、同社に対して「とにかくgitのpullリクエストを出してほしい」と伝えていた。
"Linuxの生みの親"トーバルズ氏:「私はもうプログラマーではない」Phoronixの記事でも指摘されている通り、Torvalds氏は米国時間9月2日に、Paragon Softwareに対してNTFS3のプルリクエストがLinux 5.15にサブミットされるかどうかを再び尋ねた。
それに対して、Paragon SoftwareのKonstantin Komarov氏は、3日にNTFS3のプルリクエストを送ったと回答したが、Torvalds氏の意に反して、このプルリクエストはGitHubのウェブインターフェースから送られたものだった。
Kamarov氏は、プルリクエストについての説明で、「これはNTFSの読み取り・書き込みドライバーだ。現在のバージョンでは、通常のファイル、圧縮ファイル、スパースファイルを扱うことができ、aclやNTFSジャーナルのリプレイにも対応している」と説明した。
Registerの記事によれば、Torvalds氏はこのプルリクエストを受けて、Komarov氏に今後プルリクエストを送る際に避けるべきことをいくつか指摘した。同氏は特に、GitHubのウェブインターフェースを使ってLinuxカーネルにコードをマージするのは避けるべきだと強調している。
「今回はGitHubによるマージのコミットが行われた」とTorvalds氏は述べている。
「これは私が絶対に避けてほしいことの1つだ。GitHubが生成するマージは完全に使い物にならないため、何かをマージするときには、決してGitHubのインターフェースを使うべきではない。GitHubはホスティングサイトとしては優れているし、非常に優れた機能を数多く持っているが、マージはそれに当てはまらない」(同氏)
Torvalds氏が問題視しているのは、「何がマージされようとしているか、なぜそれをマージしようとしているかについての情報を含む、適切なコミットメッセージが必要だ。そして同時に、適切なオーサーシップとコミッターに関する情報なども必要になる。GitHubはこれらに完全に失敗している」ことだという。
Torvalds氏はまた、セキュリティに関するアドバイスもしている。
同氏は、「GitHubのアカウント(あるいは、私がアカウント管理について信頼しているkernel.org以外のあらゆるアカウント)を使う際には、プルリクエストにブランチだけでなく署名付きタグを付けてほしい」と述べた。
「理想的な世界であれば、コミッターまで直接信頼の連鎖をたどれるPGP署名を使うべきなのだろうが、実際にはそこまで必要になったことはない。信頼の連鎖が成立している方が望ましいが、それを確立するのが簡単ではないことも分かっている。しかし、少なくとも継続的に同じ『ID』が使われており、プルリクエストがその鍵をコントロールしている同一の主体から来ていることが分かるようになっていてほしいと思っている」 (同氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。