バラク・オバマ米大統領が2009年に政権についたとき、同氏は愛用の「BlackBerry」を持ち続けようとして頑張った。
セキュリティーの問題から、しばらくの間、通常のBlackBerryとセキュアな「Sectéra Edge」(冒頭の画像ギャラリー参照)の2台持ちを強いられた(日本語版記事)が、最終的に大統領には、米国家安全保障局(NSA)が認定する暗号技術が搭載された特別な「BlackBerry 8830 World Edition」が支給された。
こうしてオバマ大統領はBlackBerryを持ち続けたが、その後、モバイル業界の技術変化はホワイトハウスまで及んでいたようだ。
オバマ大統領は最近、トーク番組「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン」に出演し、現在はBlackBerryでなく、セキュアにされすぎて子ども用のおもちゃ電話のようになってしまった「スマートフォン」を持ち歩いていると語った(文末に動画:「カメラもないしテキストメッセージも出せないし通話もできないし音楽も再生できない」という)。
大統領は番組で機種名は挙げなかったが、ホワイトハウスに通信サーヴィスを提供する米国防情報システム局(DISA)がサポートしているモバイル機器はひとつしかない。それは「強化」されたサムスンの「Galaxy S4」だ。
Galaxy S4は現在、DISAの「DMCC-S」(DOD Mobility Classified Capability-Secret)プログラムでサポートされている唯一のデヴァイスだ。サムスンの複数のデヴァイスは2014年、いち早く国家情報保証パートナーシップ(NIAP)のCSfC(Commercial Solutions for Classified)プログラムで国家安全保障局(NSA)の承認を得た。これは、サムスンのセキュリティー技術「KNOX」によるところが大きかった。
DISAが管理するサービスで階層化されたGalaxy S4は、シークレットに分類される「DOD SIPRNetネットワーク」への接続が、商用携帯電話として初めて承認されている。
現在、DMCCプログラムにおいて商用デヴァイスで扱える最高レベルの区分は「シークレット」だ。ジョン・ケリー国務長官はDMCC-Sをいち早く導入し、強化されたGalaxy S4のベータ版テスターを務めた。
DMCC-SのGalaxy S4は、セキュリティのために機能の一部を犠牲にしている。生体認証が採用されている一方で、ユーザーが利用できるカメラがなく、もちろんセルフィーも撮影できない。DMCC-SのGalaxy S4では、「Android」アプリケーションの選択も、DISAによる「Mobile Application Store」(MAS)のものに制限されている。
標準的なDMCC-SのGalaxy S4は、セキュアなVoIPに加えて普通の国内通話と国際通話にも使うことができる。DMCC-SのGalaxy S4では、DISAの同機に関するデータシートによると、電子メールの利用は「セキュアな『Outlook Web Access』」を通じて提供される。
オバマ大統領はファロン氏の番組で、「電話はかけられない」と語っていたが、「大統領のGalaxy S4」は、通話がセキュアなVoIPに限定されていて、セキュアな交換台によって制御されていると見られる。