2021年12月15日ビジネス・経済
東京建物とピクシーダストテクノロジーズ(東京都千代田区、落合陽一CEO)は会議のオンライン化がビジネスパーソンの疲労度に与える影響を明らかにした。東京建物の社員100人以上を被験者に「ウェブ会議」と「オフライン(対面)会議」や、それら両方を混合した会議についてそれぞれ疲労度を測定した。その結果、疲労度は「混合会議」が最も高く、それに「対面会議」「ウェブ会議」と続いた。また、「ウェブ会議」はオフィスよりも、自宅から参加する方が疲労度は高い傾向が出た。
コロナ禍によるテレワークの普及で、オフィスにはビジネスパーソンがあえてそこで働きたいと考えるような付加価値が求められている。東京建物は今回の結果をそうした提案に生かす。
混合会議は「対面参加」も「ウェブ参加」も疲れる
実験は2020年10月-21年3月に東京建物八重洲ビル(東京都中央区)で実施した。精神疲労を測定する既存手法「フリッカー測定(※)」を用いて、会議前後のフリッカー値の差から会議による疲労度を推定した。合わせて、それぞれ会議の場所や目的、役割といった条件を被験者へのアンケートで集計した。これにより会議の条件ごとの疲労度について約300件のサンプルを抽出した。
この結果、混合会議がウェブ会議や対面会議に比べて「顕著に疲労度が高かった」(ピクシーダストの西村さん)という。混合会議の疲労度は、会議室において対面で参加するか、会議室以外からウェブで参加するかを問わず高かった。参加方法の違いによる疲労度を比べると、ウェブ参加よりも対面参加の方が、やや高かった。
また、「ウェブ会議」はオフィスの自席から参加した人よりも、自宅から参加した人の方が疲労度は高かった。そのほか、▽参加メンバーが社内のみの会議よりも、社外を交えた会議の疲労度が高い▽情報共有よりもアイデアを創出する会議の方が疲労度は高い――といった結果だった。
実験を主導した東京建物ビル事業企画部の佐世貴志さんは「混合会議はウェブ参加者の音声の遅延や画像の乱れなどで会話のテンポが悪くなりやすく、一体感がなくなることで疲れやすくなるのでしょう。ウェブ会議について、オフィスの自席より自宅から参加する方が疲れやすい点は仮説が難しいですが、自宅の机や椅子など什器の問題でオフィスより働きにくいからではないでしょうか」と説明した。
その上で「(混合会議は、会議室から対面で参加しても疲れやすいという結果を基に)例えば、高性能な音響やカメラを設置した疲れにくいウェブ会議を実現する会議室の企画提案などにつなげていきたい」と続けた。
「仮眠」「運動」に効果あり
実験では、勤務中の「仮眠」や「運動」が疲労度に与える影響も調べた。オフィスに設置した複数のカメラで撮影した人の姿勢や動きなどを基に、ピクシーダスト独自のアルゴリズムを活用して推定した。その結果、おおむね昼休み明けの時間帯に15分程度の「仮眠」や「運動」をそれぞれ取ったグループは、取っていないグループに比べて疲労度が下がった。疲労度を下げる効果は、「運動」よりも「仮眠」の方が大きかった。
今回の共同研究は、知的生産性を高めるオフィスのあり方を模索する一環。「知的生産性」を構成する「疲労」「集中」「コミュニケーション」の三要素のうち、最も基礎になるとされる「疲労」に着目して検証した。東京建物とピクシーダストはフリーアドレスか固定席かといったオフィスのレイアウトによる疲労度の違いや、「コミュニケーション」に着目した追加の共同研究も今後の実施を検討している。
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