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「細胞を持たない」「自己増殖をしない」などの特徴から、ウイルスは「非生物である」とされています。しかし、生存競争によりウイルスは日々進化しており、生物に近い特徴を持ったウイルスが新たに発見されたことから、ウイルスの定義が揺らいでいます。Clades of huge phages from across Earth’s ecosystems | Naturehttps://www.nature.com/articles/s41586-020-2007-4Huge bacteria-eating viruses close gap between life and non-life: Large bacteriophages carry bacterial genes, including CRISPR and ribosomal proteins -- ScienceDailyhttps://www.sciencedaily.com/releases/2020/02/200212131458.htm細菌に感染するウイルスの一種であるバクテリオファージには、頭部と尾部に分かれた特徴的な形状の種類などが存在します。
カリフォルニア大学の研究チームは、海、地中といった自然環境から、未熟児や妊婦の腸など、30種類以上の環境から得た大規模なDNAのデータベースを持っています。研究チームはその中からウイルスの平均ゲノムの4倍以上の大きさを持つ、351種類もの巨大なバクテリオファージを特定しました。平均の約15倍である73万5000塩基対のゲノムを持つバクテリオファージも存在し、これは記事作成時点で最大のバクテリオファージであるとされています。また、巨大なバクテリオファージの遺伝子は、細胞がタンパク質の合成を行う構造であるリボソームに不可欠なタンパク質の遺伝子を持っていることが明らかになりました。論文の共著者である、研究員のロハン・サクデヴァ氏は「リボソームの有無は生物と非生物を分ける基準の一つです。生物ではないウイルスがリボソームに不可欠な遺伝子を持っているということは、生物と非生物の境界線を曖昧にしています」と述べています。バクテリオファージが持つリボソームの遺伝子は、宿主である細菌の細胞内にあるリボソームに対して、バクテリオファージが持つタンパク質のコピーを多く作らせるよう操作する力がある可能性が示唆されています。
カリフォルニア大学の環境科学教授で、論文の筆頭著者であるジル・バンフィールド氏は、「巨大なバクテリオファージは生存戦略の末に生まれたものと考えられます。我々がウイルスと定義していたものと生物のハイブリッドであると見なすことができます」と述べています。バンフィールド氏が2019年に発表した研究では、Lakファージと呼ばれる巨大なバクテリオファージの一部がヒトの腸や口の中に存在し、腸や唾液の微生物叢を捕食していることを報告しています。さらに、巨大なバクテリオファージのDNAには、細菌がウイルスに抵抗するためのCRISPRシステムの一部が含まれています。バクテリオファージが宿主である細菌にDNAを注入することで、宿主のCRISPRシステムを乗っ取り、バクテリオファージ以外のウイルスだけを標的にするよう仕向ける可能性があると考えられています。巨大なバクテリオファージがヒトにどのような悪影響を及ぼすかについては明言されていませんが、バンフィールド氏は「ヒトの病気はバクテリオファージによって間接的に引き起こされることがあります。バクテリオファージは、病原性や抗生物質への耐性に関連する遺伝子の周りを移動する性質があり、ゲノムが大きければ大きいほど遺伝子の周囲を動き回りやすくなるので、ヒトの細菌に不要な遺伝子を運ぶ確率も高くなります」と語っています。
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in サイエンス, 生き物, Posted by darkhorse_log
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